夏の夜の夢

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 その後、連絡はなかったのだが、次の年の春に突然、梨香の母から、彼女が亡くなったと知らされた。遺伝性の病気を患っていたそうで治療法はなかったという。 「そうだったのね。たぶん梨香さんは自分の病状を知っていて、優一さんに感謝とお別れを言いに来たんじゃないかな」悠里は悲しそうに目を細めた。  悠里に、あの夏の夜に見た流星の話をした。 人間の意識はどこかに保管され原子とともに、いつか遠い未来に、どこかの星に降り注ぐ。無限とか永遠とかは、そういうものではないのか。スパークリングワインの泡を見ながらそんな想いを話した。  「優一さんはロマンチストよね。でも、現実には今日や明日の生活があるのよね。最近、野菜やパン、コーヒーやお酒、そしてガソリンや電気代までずいぶん値上がりしているのよ」悠里はいつもの口調だ。  そうなのだ、今日一日、この瞬間を精一杯大切に生きることが、私たち二人の未来へつなぐ幸せなのだ。  スパークリングワインの金色の泡が、私の想いを封じ込め小さな音を立て宙に弾ける、あの夜の流星のように。    (完)
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