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悪戯ハロウィン(前編)【Side 桜】
「こ、これでいいですか?」
「わ!雪さん、とっても可愛いです!」
黒いミニドレスに黒い耳、そして黒い尻尾。やっぱり雪さんには黒猫の衣装がぴったりだった。
「あの……これ本当に着ないとダメですか?」
「ダメです!せっかくのハロウィンなんですから!それにとっても似合ってますよ?」
「でも、この年でこの衣装は恥ずかしいです。むしろ私が魔女役やった方がまだマシなのでは……」
「魔女は子供のサイズしか用意していません。諦めて黒猫さんになりきってください」
ね?ってお願いすると、断りきれずに頷く雪さん。ほんとお人好しで可愛らしい人。
雪さんがお屋敷にご招待してくれたのは、先週のことだった。一緒にハロウィンパーティーをしましょうって。以前、あんなに失礼なことをしてしまったのに、変わらず優しくお声をかけてくださったのが嬉しくて、電話越しに泣きそうになってしまった。
雪さんは、私や使用人の皆さんと思い出に残る写真を撮りたいとおっしゃっていて、どうせやるなら最高の思い出にしようと必死にあれこれ考えた。今日の衣装もそのひとつだ。
「本当にやるんですか?」
「もちろんですわ!お屋敷の殿方をあっと言わせてやりましょう!」
三角帽子の角度をキュッと調整しながら、雪さんを鼓舞する。
「皆さん、怒りだすんじゃないでしょうか」
「ここの皆さんはこんなことで怒りだすような心の狭い方達ではありませんよ!……それに、欲しいですよね?みなさんの……」
耳元で囁くと、雪さんは真剣な表情でコクリと頷いた。覚悟は決まったようだ。
「さぁ、ではお兄様の部屋から参りましょう!イタズラ作戦スタートです!」
「は、はい!」
二人で右手の拳を天井に掲げて気合を入れてから、バタバタと階段を降りた。
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