悪戯ハロウィン(前編)【Side 桜】

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「あはははは!……こ、コラ、ゆきちゃん!ダメっ!」  お兄様が雪さんの両手首を掴んで、顔の横まで持ち上げる。 「何してんの!?」 「何って……イタズラです」 「イ、イタズラって……こんなことしたことないじゃん!……もしかして、桜?」  お兄様が怒りのオーラを纏いながらこちらを見てくる。……よし、撤退しましょう。 「ゆきさん!次のお部屋にいきましょう!」 「は、はい!では桃ちゃん、失礼します!」 「あ、ちょ、ちょっと待って!」  引き止めるお兄様を華麗にスルーして、二人でバタバタと部屋を出た。扉を閉めて、深呼吸する。 「はぁはぁ。上手くいきましたね!」 「さ、桜さん……」 「何ですか?」  もしかして、今ので怖気付いてしまったかしら。下を向く雪さんを恐る恐る伺うと。 「これ、とっても面白いですね!」  キラッキラした瞳で顔を上げる雪さん。……予想外に、すごく楽しんでいらっしゃる。 「ですよね!じゃあ、次の部屋に参りましょう!」 「はい!次は黒さんですね!」  黒さんからは、お花の形をしたお菓子を頂いた。花びら一枚一枚がクッキーでできていて、ホワイトチョコレートでくっつけてある。とっても可愛くて、とっても美味しそう。  きちんとお礼を言ってから、作戦スタートだ。 「黒さん、トリックオアトリート!」 「え!?本日はお嬢様のお菓子は用意しないようにと……」 「えい!」 「あっ、ちょっ、あはははっ、おじょう……あはははは!」  雪さんがサッとしゃがみ込んで、黒さんの太ももやふくらはぎをくすぐる。こんなに笑う彼をみるのは初めてで、少し呆然としてしまった。いけない、写真撮らなきゃ!ハッと思い出し、きちんとスマホに収める。 「お嬢様!」  黒さんがふわりとお嬢様を抱っこして、くすぐりタイムは終わってしまった。 「何をしているんですか!」 「ふふっイタズラです」 「イタズラって……」 「桜さん、次のお部屋に向かいましょう!」  困惑しながらも、ゆっくりと雪さんを降ろしてくれる黒さんが優しい。挨拶をして、次のお部屋に向かった。
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