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「あはははは!……こ、コラ、ゆきちゃん!ダメっ!」
お兄様が雪さんの両手首を掴んで、顔の横まで持ち上げる。
「何してんの!?」
「何って……イタズラです」
「イ、イタズラって……こんなことしたことないじゃん!……もしかして、桜?」
お兄様が怒りのオーラを纏いながらこちらを見てくる。……よし、撤退しましょう。
「ゆきさん!次のお部屋にいきましょう!」
「は、はい!では桃ちゃん、失礼します!」
「あ、ちょ、ちょっと待って!」
引き止めるお兄様を華麗にスルーして、二人でバタバタと部屋を出た。扉を閉めて、深呼吸する。
「はぁはぁ。上手くいきましたね!」
「さ、桜さん……」
「何ですか?」
もしかして、今ので怖気付いてしまったかしら。下を向く雪さんを恐る恐る伺うと。
「これ、とっても面白いですね!」
キラッキラした瞳で顔を上げる雪さん。……予想外に、すごく楽しんでいらっしゃる。
「ですよね!じゃあ、次の部屋に参りましょう!」
「はい!次は黒さんですね!」
黒さんからは、お花の形をしたお菓子を頂いた。花びら一枚一枚がクッキーでできていて、ホワイトチョコレートでくっつけてある。とっても可愛くて、とっても美味しそう。
きちんとお礼を言ってから、作戦スタートだ。
「黒さん、トリックオアトリート!」
「え!?本日はお嬢様のお菓子は用意しないようにと……」
「えい!」
「あっ、ちょっ、あはははっ、おじょう……あはははは!」
雪さんがサッとしゃがみ込んで、黒さんの太ももやふくらはぎをくすぐる。こんなに笑う彼をみるのは初めてで、少し呆然としてしまった。いけない、写真撮らなきゃ!ハッと思い出し、きちんとスマホに収める。
「お嬢様!」
黒さんがふわりとお嬢様を抱っこして、くすぐりタイムは終わってしまった。
「何をしているんですか!」
「ふふっイタズラです」
「イタズラって……」
「桜さん、次のお部屋に向かいましょう!」
困惑しながらも、ゆっくりと雪さんを降ろしてくれる黒さんが優しい。挨拶をして、次のお部屋に向かった。
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