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それから、紅河さん、紫釉さん、灰人さんと、順調にイタズラを完遂していった。雪さんは皆さんの弱点をよく理解していて、紅河さんは脇、紫釉さんは背中、そして灰人さんは首をくすぐり、見事爆笑写真をゲットしていた。
「い、今の灰人さんは、危機一髪でしたね」
「あれ、本気で怒った時の灰人さんでした。久しぶりに見ました」
光を失った目をしながら肩で息をする雪さんは、ブルブルと身震いしていた。
雪さんが背伸びして灰人さんの首をくすぐり、写真を撮ったところまでは良かった。その後、灰人さんに両手をガシッと掴まれ、雪さんは壁に追い詰められてしまったのだ。
『雪お嬢様?随分とイタズラが過ぎるのではないですか?』
ニコニコと微笑みながら壁ドンする灰人さんが、全身に怒りのオーラを放っているのが私にもわかった。あれを目の前で見ていた雪さんは、さらに怖かっただろう。これはマズイと思い急いで扉を開けると、それに気がついた雪さんが素早くしゃがんで、灰人さんの包囲を上手くすり抜け、ダッシュで部屋を後にしたのだった。
「これは、後で絶対に怒られますね」
「ごめんなさい雪さん。私のせいで……」
「いえ、いいんです!怒られたとしても、こんなに面白いことやめられません。桜さんとこんな風に遊べるなんて最高ですし!さ、最後は緑君ですよ!」
雪さんが私の手を取って、こっちこっちと引っ張る。まるで私と同じ小学生のような、ヤンチャな顔をした雪さんが可笑しくて、くすくす笑いながら彼女の手をしっかりと繋いだ。
コンコン、と緑さんの部屋をノックする。でも、いくら待っても反応が返ってこなかった。
「おかしいですね、この時間にお邪魔するって伝えたのですが……」
「他の部屋にいらっしゃるのでしょうか」
二人でうーんと悩んでいると、雪さんが何かに気がついたようにパッと顔を上げた。
「桜さん、何か甘い匂いしませんか?」
「……ほんとですね。私がいただいたお菓子でしょうか」
お菓子が入った袋を嗅いでみるけれど、これとは違う香りみたい。
「ふふっ、緑君の居場所がわかりましたよ!」
突然楽しそうに駆け出す雪さんに手を引っ張られながら、彼女だけが知っている正解の場所へと向かった。
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