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「ゆ、雪さん!感動してるところ申し訳ないのですが、これでは作戦が……」
「は!そ、そうですね!」
雪さんは少し悩んだ後、何かを決心したようにコクリと頷いた。
「緑君、いただきます!」
大声で叫んで、雪さんはパクリとマカロンを食べた。口に入れた瞬間、幸せそうに顔が緩んでいく。
「うわぁ、とてつもなく美味しいです」
見ている私もゴクリと喉がなってしまった。雪さんは蕩けた顔のままマカロンを飲み込むと、再び緑さんに向き合った。
「トリックオアトリート!」
「はぁ!?今あげただろーが」
「トリックオアトリート!」
「お前っ……それしか言えねーのか。だいたいお前がダイエット中とか言うから小さいやつ作ってやったんだろ」
「トリートできないんですね?」
雪さん、どう考えても無理矢理すぎる。でもこうでもしないと写真は撮れなさそうなので、成り行きを見守りつつスマホを構えた。
「えい!」
「……」
雪さんが緑君の腰をくすぐる。でも、彼は何の反応もしなかった。
「あれ?こ、ここですか?」
脇に移動しても、現状は変わらなかった。その後、背中、首、足、どこを刺激しても緑さんは反応してくれない。
「緑君、いい加減にしてください」
「いや、こっちのセリフだわ!急に触りまくりやがって、それセクハラだからな!」
「どこなんですか?もうほとんど試したのに……もしかして、耳ですか?」
「……やめろ」
雪さんが耳に触れようと背伸びすると、緑さんも負けじと背伸びし始めた。
「やっぱり、ココなんですね?」
「おい、いい加減諦めろ、バカ村」
「諦めません」
「コラ、やめろって……あ、バカ!」
緑さんが雪さんの手を振り払った瞬間、バランスを崩した彼女が後ろ向きに倒れていく。
「危ない!」
思わずギュッと目を閉じる。これから聞こえてくるであろう、雪さんの頭と床が接触する音を想像して、体をこわばらせた。
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