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そこからはおれも亀さんも、ひたすら無言で歩く。
ご飯は朝と夜だけ、休憩の団子屋はナシ。夜は野宿。
無我夢中で歩いたら、なんと二日と半日で京に戻ってくることができた。
ちょっとだけ見慣れてきた、京の街並みにホッとしていると、急に亀さんがおれの体を引っ張った。
「……創太くん、顔を伏せろ。」
「えっ?」
「新撰組だ。」
ちらっとみると、見慣れた青い服の集団が町を横切っていく。
あれから六日も経ってしまった。花はどうしてるだろう。
花のもとにも行きたい、でも和真も心配だ。
「……とにかく、龍馬さんと合流しよう。」
おれたちはなるべく目立たないように気をつけながら、坂本さんが泊まっているという宿へ向かった。
*
「寺田屋」と書いてあるその建物は、立派な旅館みたいだ。緊張しながら中に入ると、ちょっと怖そうなおばさんが出迎えてくれた。
「あら、亀さん。もう帰ってきたのかい?」
「いや、いろいろあって引き返してきたんです。龍馬さんと、あの子どもは?」
「二階にいるよ。……その子は?」
するどい目でキッとにらまれて、体が固まる。
「は、はじめまして!」
ピシッとあいさつをすると、おばさんはにっこりと笑った。
「ちゃんとあいさつできる子どもは嫌いじゃないよ。わたしはお登勢。この宿の女将さ。」
「そ、創太です……。」
「創太か。上にいる和真といい、近頃は変わった名前の子どもが多いね。」
「‼︎」
和真。お登勢さんは確かに、そう言った。
ここに、和真がいるんだ!
いてもたってもいられなくて、おれは亀さんより先に一段飛ばしで階段を駆け上がる。亀さんとお登勢さんの驚く声が聞こえた。
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