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寒い。目をあけて最初に感じたのはそれだった。
頭はぼんやりしているのに、ここが自分の部屋じゃないとすぐに気づく。
「やっぱり……。」
また外だ。草がチクチクと足の裏にささる。しまった、靴をはいてくればよかった。
とりあえず立ち上がってあたりを見回す。
足ぶみをしたら草と地面の感覚がわかって、とても夢だとは思えない。
「どうなってんだよ、これ。」
そうつぶやいた声は闇の中に消えた。
街灯も家の明かりもなにもない、暗い空間。
よかった、さっきの刀で斬り合いをしているおじさんたちは近くにいないようだ。
虫の声とか、風で木が揺れる音しか聞こえない。
後ろに広がっているのは、大きな森。
向こうのほうに、……ぼんやりだけど建物がある気がする。きっとあっちが町だ。
おれは手がかりがありそうな町のほうへと足を進める。
こんな夜に一人だけで出歩いたことなんてないからドキドキする。しかも、全く知らない道だ。
それにしても、なんでこんなに静かなんだろう。
誰も歩いてないし、車も通ってない。まだ夜の八時半とは思えないや。
鳥の声やカエルの声っぽいのがやけに大きく聞こえる。
少しすると川の音も聞こえてきて、自分が橋を目指して歩いてきたんだってことがわかった。
……木でできた茶色い橋。
よく見ると、橋の向こうにある建物も、木の色をしている。
どうしてか、一つも明かりがついていない。街灯だってない。電柱も見当たらないってどういうことだよ。まさか、電気がないのか?
田舎ってよりも、なんだか古くさい町だなって思う。じいちゃんの家に行くとテレビで流れてる、時代劇のセットみたいだ。
おそるおそる橋を渡る。思っていたより何倍もしっかりとしているみたいで、ミシリとも言わなかった。
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