9人が本棚に入れています
本棚に追加
「……ん?」
橋の真ん中まできて、いくつか看板が立っていることに気づく。
ライトがついているわけじゃないけど、月明かりで読むことができた。
「ひと……あいて? くばりがき?」
そこに貼ってある紙には、『人相手配書』という大きな文字と、ミミズみたいなグニャグニャの文字、それからやけにリアルな顔の絵が描かれていた。文字に読み仮名がふってないから、何のことかちっともわからない。
「ははっ、変な髪型。」
前髪がなくて、耳の上と頭のてっぺんにだけ髪の毛がある。それこそ時代劇に出てくる人みたいだ。
時代劇のポスターだろうか、それにしてはただの手書きだけど……って、思いながら一枚ずつながめていったら。
「……⁉」
三枚貼られていたうちの、最後の紙を見てぎょっとする。
他の二枚に描かれている人物とは全然違う、短く切った髪。
そして目の周りは丸でかこんである。……これ、メガネだよな。
おれとは似ていないと言われる、キリッとした目つき。への字に結ばれた口。他の絵よりも明らかに幼い顔。
「か、和真……?」
紙に描かれているのは、どこからどう見ても和真の顔だ。
写真じゃないくせにそっくりだなんて、これ描いた人すげーな……じゃなくて。
どうしてこんなところに、和真の似顔絵があるんだ⁉
そもそもこの紙、なんなんだよ。
よくわからないけど、いいものではない気がする!
あわてて手をのばして、その紙を剥がそうとした、そのとき。
「童。なにをしている。」
……ものすごく冷たい声が、おれの背中をさす。
直接触られたわけじゃないのに、体がぞわぞわと震えた。
ロボットみたいにゆっくり振り向くと、そこには、三人の男の人が立っていた。
「あ……えっと……。」
この人たち、いつの間にこんなに近くにいたんだろう。足音なんて聞こえなかった。
前に見た斬り合いをしていた人たちと同じようにハカマを履いていたけど、雰囲気が全然ちがう。
目が、獣のように鋭い。なんというか、ギラギラしてる。
最初のコメントを投稿しよう!