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何か言わなきゃ、そう思ったのに口が動かない。寒いのに背中に汗が流れる。
「人相書きを勝手に剥がすとは、重罪だぞ。」
にんそうがき。これ、そう読むのか。
とにかくこれを剥がしちゃだめってことか?
「あ、の、……これ、たぶんおれの弟なんですけど、なんて書いてあるんですか?」
「⁉」
やっとのことで言葉をしぼりだしたとたん、男の人たちの表情が変わった。
キン。
とつぜん金属の音がしたと思ったら……銀色に光る長いものがおれの目の前につきつけられた。
「……ひえっ⁉」
か、刀⁉
あわてて飛び退こうとしたけど、右も左もかこまれてしまった。
ここに来てから、やけに月が大きくてまぶしいから嫌でもわかる。
今、おれの顔の目の前にあるのは、アルミやメッキなんかじゃない……本物の刀だ。
「な、あぶないって! なんなんだよ、いったい……!」
最初に斬り合いをしてたおっさんたちといい、こいつらといい。
なんで平気で刃物を振り回してるんだよ。
あと数センチでおれの鼻を斬っちゃいそうだ。
怖くて、足がガタガタと震える。目からは勝手に涙が出た。
「……その罪人の身内というならば、捕らえる必要がある。」
「ざ、罪人⁉」
ざいにん、って、悪いことをした犯人って意味だよな?
「なに言ってんだよ、和真が悪いことするわけない!」
とっさにさけぶと、おれを見下ろす目つきがさらに鋭くなった。
「罪人をかばうのであれば、童だろうと同罪だ。居場所をしっているかもしれん、連れて行け。」
「はい!」
真ん中の人が横の二人に指示をして、あっという間に両手をつかまれる。
な、なんだよこいつら。大人のくせに、子どもに刀を突きつけたり、強い力でつかんだり……!
とにかく、この大人たちは味方じゃないのはわかるから捕まったらまずい気がする。
「うわぁぁぁぁっ!」
おれは大声を出して、おれの右腕をつかんでいるやつに体当たりした。
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