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とつぜん叫んだからおどろいたのか、つかまれている力がゆるんで大人たちの間を抜け出すことができた。
「っ、逃がすな!」
真ん中で一歩下がっていた、たぶんリーダーっぽいやつが大声で言う。
その瞬間、銀色の光が二ついっぺんに襲いかかってきた。
「はぁっ⁉ 無理! やばいって!」
大人三人が刀を持って追いかけてくるって、どういうことだよ!
「け、警察! どこだよ! おまわりさん!」
あわてて交番を探すけど、そんなもの見当たらない。パトカーの赤い光もない、そもそも車だって走ってないんだもんな。
切られるのは怖い、捕まるのも嫌だ。
来た道のほうへ駆け出そうとしたけれど、相手はスポーツ選手かよってくらい走るのが速い。またあっという間に囲まれてしまった。おれも、足は早いほうだと思ってたのに……。
「……っ、あんたたち、恥ずかしくねーのかよ! 子ども相手にこんなの……!」
おれが泣きながら叫んでも、そいつらは顔色一つ変えない。
「おれたちは、手向かうものには容赦しない。」
リーダーっぽいやつが、刀を再びこっちに向ける。
月の光がいっそう輝いて、そいつらが青色の羽織を着ていることがわかった。
捕まったらどうなるんだろう。和真を罪人扱いしているくらいだ、おれに優しくしてくれるわけがない。
ひどい扱いされるぐらいなら、いっそ……!
「‼」
おれは橋の欄干のすきまから……思い切って川に飛びこんだ!
三人が驚いた顔でこっちを見下ろしているのが見える。そのままバシャンって音を立てて、おれの体は川の中へ。
濡れるほうが刀で切られるよりマシだって、そう思ったんだけど。
(お、思ったより深い……!)
足もつかないし、流れも速い。学校のプールや海辺とは大違いだ。
必死でもがいたけど、体がしずんでいく。
意識のはしっこで小さく、『GAME OVER』って声が聞こえた気がした。
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