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3 作戦会議
「お、おぼれっ、……⁉」
バタバタと両手両足を動かしたけど、そこにあったのは踏み慣れたカーペットの感触。
……自分の、部屋だ。
ハッとして天井を見ながら深呼吸。それから体を起こした。
体も服も一切濡れていない。ただリアルな夢を見ただけ、と言ってしまえばそれまでなんだけど……。
「八時、三十一分。」
部屋の時計を確認してつぶやく。
やっぱりさっきから時間が進んでいない。
すぐそばに落ちていたタブレットには、回答を書き込む前の画面が映し出されている。
「……やっぱ夢じゃねーよ。だって、ハッキリ〝体験〟してるもん……。」
靴下のまま歩いた地面の感触。
あの三人組に襲われたときの恐怖。
川に落ちて、体が水を吸って重くなっていく感覚……。
そして何より、一瞬だけつかまれた腕に、その痛みが残っている。
誰に言っても信じてもらえないだろうけど、おれ、ここではない別の世界に行ったかもしれない。それも、二回も。
あの世界に行くとき、一回目も二回目も、指先から引っ張られるような感覚がした。
……まさか、この画面の中に吸い込まれたとか……?
手元にあるタブレットが気味の悪いものに感じて、思わず後ずさる。
どうなってんだよ。やっぱり、この変なアプリのせいなのか?
もう触らないようにしなくちゃって考えて、あることに気づく。
……もしかして、和真もこの中に吸いこまれて。
そして、元の世界にもどってこれてないのかも……⁉
つーかあいつそっくりの似顔絵が「罪人」とか言われてたよな。
やっぱりあれは和真本人で、和真は今もあの世界にいるんだとしたら。
(なにやってんだよ、あいつ!)
あんなに頭いいのに、なんで迷ってんだ? おれなんて二回ともすぐにもどってこれたのに。
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