9人が本棚に入れています
本棚に追加
とにかく、警察に連絡しちゃう前に父さんと母さんに知らせなきゃ。
って思って立ち上がったけど、ハッとする。
『タブレットの中に別の世界みたいなものがあって、和真はたぶんそこにいるんだ!』
なんて言ったって、信じてもらえるわけがない!
特に母さんはいまパニックになってるから、ふざけないでって怒られるかも。
おれはその世界に実際に行ってきたけど、実際にはケガもしてないし、何の証拠もないもんな。
「あーもう、どうすりゃいいんだよ⁉」
考えてもわからなくて、頭を抱えて叫んだ、そのとき。
〝コンコン〟
部屋の窓ガラスをたたく音がして、そっちを見る。
カーテンを閉めていなかった窓の向こうには、見知った顔が立っていた。
「は、花!」
いそいで窓をあけて、ガラス越しじゃない幼なじみと対面する。
ぎゅっと寄せられた眉間にはシワができていて、どうやら彼女は怒っているようだった。
「創太、さっきから一人で叫んで、なんなの? うるさいんだけど!」
ショートカットの黒髪、おれよりちょっとだけ高い身長、長い手足。
同じ小六の三(み)島(しま)花(はな)は、となりの家に住んでいるおれと和真の幼なじみだ。
もちろん学校も一緒。クラスは別。成績優秀、スポーツも万能。町の剣道クラブに入っていて、どっちかというと女子にモテるタイプ。
スマホを持ってないから誰にも相談できないおれにとって、花の姿は神様のように見えた。
「花、ちょうどよかった、助けてくれ!」
「えっ?」
「とにかくこっち来いって!」
おれが手を引っぱると、花は顔を赤くして手を振りほどいた。
最初のコメントを投稿しよう!