1 弟が消えた⁉︎

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* 「ん……。」 すごく気分が悪い。まるで車酔いでもしているみたいだ。 おれ、寝てたのか? ゆっくり目を開けて、体を起こすと。 「寒っ! てか、外⁉」  ……手のひらに触れているのは砂利。顔には冷たい風がようしゃなくあたる。  うそだろ? なんで外に来ているんだ?  おれ、さっきまで部屋の中にいたよな?  その証拠に、足には靴下しか履いていない。立ち上がったら、足の裏がチクチク痛んだ。 「どこだよ、ここ……。」  しかも、家の近所でも学校の周りでもない、知らない景色が目の前に広がっている。  どうなってるんだよ、これ。夢だって思いたいけど、感覚はリアルだ。  寒いし、足の裏は痛いし、わけわかんないし。  心細くてちょっとだけ泣きそうになったおれの耳に、かすかに人の声が聞こえてきた。  ……誰かいる。誰でもいいから、助けてくれ!  そう思いながら草むらをわけて声のほうへ近づくと、「やー!」とか「きー!」とか大声をあげて、棒を振りまわしてる大人が二人。 これ、剣道の打ち合いだ。幼なじみが剣道をやってるから、道場の見学に行ったときに見たことがある。  それにしてもなんでこのおっさんたち、夜に外で剣道の練習してるんだ?  しかもちゃんとハカマまで履いて……。  いろいろ思うことはあったけど、とにかく大人の存在を見つけて安心する。  ケータイを持っていたら借してもらって、家に電話をかけよう。駅とか交番までの道を教えてもらえるだけでも助かる。 「あのー、すみませーん……。ちょっと聞きたいんですけど……。」  こういうとき、自分が人見知りをしないタイプでよかったなって思う。  ゆっくり近づいたおれの目の前で、刀同士がぶつかってカキンと音を立てる。 そのとき、チカッと火花が光ったような気がした。  ……え、火花?  も、もしかして、本物の刀⁉ 「な、なにやってるんすか⁉ あぶないって……‼」  竹刀とか木の刀とか、そういうものを使って練習してるんだと思ってたけど。 本物の刃物と刃物同士で打ち合いをしてるなんて、どうかしてる!
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