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「ん……。」
すごく気分が悪い。まるで車酔いでもしているみたいだ。
おれ、寝てたのか? ゆっくり目を開けて、体を起こすと。
「寒っ! てか、外⁉」
……手のひらに触れているのは砂利。顔には冷たい風がようしゃなくあたる。
うそだろ? なんで外に来ているんだ?
おれ、さっきまで部屋の中にいたよな?
その証拠に、足には靴下しか履いていない。立ち上がったら、足の裏がチクチク痛んだ。
「どこだよ、ここ……。」
しかも、家の近所でも学校の周りでもない、知らない景色が目の前に広がっている。
どうなってるんだよ、これ。夢だって思いたいけど、感覚はリアルだ。
寒いし、足の裏は痛いし、わけわかんないし。
心細くてちょっとだけ泣きそうになったおれの耳に、かすかに人の声が聞こえてきた。
……誰かいる。誰でもいいから、助けてくれ!
そう思いながら草むらをわけて声のほうへ近づくと、「やー!」とか「きー!」とか大声をあげて、棒を振りまわしてる大人が二人。
これ、剣道の打ち合いだ。幼なじみが剣道をやってるから、道場の見学に行ったときに見たことがある。
それにしてもなんでこのおっさんたち、夜に外で剣道の練習してるんだ?
しかもちゃんとハカマまで履いて……。
いろいろ思うことはあったけど、とにかく大人の存在を見つけて安心する。
ケータイを持っていたら借してもらって、家に電話をかけよう。駅とか交番までの道を教えてもらえるだけでも助かる。
「あのー、すみませーん……。ちょっと聞きたいんですけど……。」
こういうとき、自分が人見知りをしないタイプでよかったなって思う。
ゆっくり近づいたおれの目の前で、刀同士がぶつかってカキンと音を立てる。
そのとき、チカッと火花が光ったような気がした。
……え、火花?
も、もしかして、本物の刀⁉
「な、なにやってるんすか⁉ あぶないって……‼」
竹刀とか木の刀とか、そういうものを使って練習してるんだと思ってたけど。
本物の刃物と刃物同士で打ち合いをしてるなんて、どうかしてる!
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