8 坂本龍馬という男

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「なんじゃ、さわがしいのぅ。……お、」 足音がうるさかったのか、奥の襖があいてモジャモジャの髪の男の人が顔を出す。坂本さんだ。 「お前は、たしかあの時の! なんじゃ、もう帰ってきたんか?」 おれの顔を指さす坂本さんがいる部屋へ、勢いよく入る。詳しい説明は後だ。 やたらに広い、畳の部屋。 ……その奥にいたのは。 「……か、和真っ!」 短い髪に、おれと同じくらいの身長、そして、猫背。  生まれてからずっと同じ家で暮らしているんだ、後ろ姿だけだってわかる。  振り返ったら、この時代じゃあまり見ないメガネのレンズがキラッと光った。  和真。  やっと、やっとたどり着いた! 「お前、なにやってんだよ! 探したんだぞ!」 目の前まで行くと、和真がちょっとだけ微笑んだように見えたから、おれは安心して涙が出そうになった。 「……やっぱり、坂本さんにこの地図を渡したの、創太だったんだ。」 その手元には、おれが持ってきたカラーの日本地図。 声も、喋り方も和真のものだ。 「ああ、地図帳のやつ持ってきた!」 「どうりで見たことあると思った。創太、よく入り口を見つけられたね。創太はあのゲーム、絶対にやらないと思ってたけど。」 「そりゃあ、……グーゼンだったけど。なんだよあのゲーム! 夢⁉︎ ここって本当に昔の日本なのか⁉︎」 「ああ、江戸時代の日本だよ。おれたちはタイムスリップしてるんだ。」 泣いているようでも困っているようでもない、冷静な和真に驚く。なんだよ、知らない場所で迷っているのはおれのほうみたいじゃないか。 「……お前、なんでこんなに落ち着いてるわけ?」 おそるおそる聞くと、和真の口から返ってきたのは思いもよらない言葉だった。 「だって、あのゲームを作ったのは、おれだから。」
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