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「なんじゃ、さわがしいのぅ。……お、」
足音がうるさかったのか、奥の襖があいてモジャモジャの髪の男の人が顔を出す。坂本さんだ。
「お前は、たしかあの時の! なんじゃ、もう帰ってきたんか?」
おれの顔を指さす坂本さんがいる部屋へ、勢いよく入る。詳しい説明は後だ。
やたらに広い、畳の部屋。
……その奥にいたのは。
「……か、和真っ!」
短い髪に、おれと同じくらいの身長、そして、猫背。
生まれてからずっと同じ家で暮らしているんだ、後ろ姿だけだってわかる。
振り返ったら、この時代じゃあまり見ないメガネのレンズがキラッと光った。
和真。
やっと、やっとたどり着いた!
「お前、なにやってんだよ! 探したんだぞ!」
目の前まで行くと、和真がちょっとだけ微笑んだように見えたから、おれは安心して涙が出そうになった。
「……やっぱり、坂本さんにこの地図を渡したの、創太だったんだ。」
その手元には、おれが持ってきたカラーの日本地図。
声も、喋り方も和真のものだ。
「ああ、地図帳のやつ持ってきた!」
「どうりで見たことあると思った。創太、よく入り口を見つけられたね。創太はあのゲーム、絶対にやらないと思ってたけど。」
「そりゃあ、……グーゼンだったけど。なんだよあのゲーム! 夢⁉︎ ここって本当に昔の日本なのか⁉︎」
「ああ、江戸時代の日本だよ。おれたちはタイムスリップしてるんだ。」
泣いているようでも困っているようでもない、冷静な和真に驚く。なんだよ、知らない場所で迷っているのはおれのほうみたいじゃないか。
「……お前、なんでこんなに落ち着いてるわけ?」
おそるおそる聞くと、和真の口から返ってきたのは思いもよらない言葉だった。
「だって、あのゲームを作ったのは、おれだから。」
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