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「……創太、まずい。今度は見回り組じゃ。一度出直すぜよ。」
小声で言った坂本さんが、かぶっていた藁のかさを深くかぶって、おれから離れる。
ミマワリグミ。新撰組とはまた別の人たちがいるのか。京っていうのは本当にすごいところだ。
だけどおれは坂本さんについて行かずに、おれを囲む大人たちの目を見て言った。
「……おれの弟は。和真は、罪人なんかじゃない!」
ビリッ。
音が立つくらい勢いよく、そこに貼ってあった紙を破る。
……そう、これは和真の顔が書かれた「人相手配書」。
だけど和真はもう、この時代のどこにもいない。
そもそもおれの弟は、この時代の人が驚くくらい頭がよくていろいろなことに詳しかっただけで、なにも悪いことはしていないんだ。
「小僧! それに手をかけたらどうなるのか、わかっているのか!」
「捕らえろ!」
やっぱりこうなるよな。
でも、ここで捕らえられてたまるか。おれは家に帰らなきゃいけないんだ。
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