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「……た、創太!」
和真の声が聞こえる。
ぱちっと目を開けると、鼻水と涙でドロドロの和真と、不安そうな顔の花がおれの顔を覗きこんでいた。
「うわっ⁉︎ お前、なに泣いてんだよ⁉︎」
思わず叫ぶと、和真はよけいに泣き出す。
「だって、創太だけこっちに戻ってこれないのかと思った……!」
「いや、たった何分かの違いだろ⁉︎ どうしたんだよ……。」
「びっくりするわよ! すぐに来るって言ったのに、来ないんだもん。何かあったのかと思うじゃない!」
花は怒って、そして和真と同じように泣きはじめる。
おれは「ごめん。」と言って、二人の肩をぽんぽんと叩いた。
いつもの天井、机、花の部屋に繋がる窓。
おれと和真の部屋だ。
「……おれ、創太たちにこんな思いさせてたのか……。」
和真はしょんぼりした様子でうつむいてる。
「そうだよ、誰だって心配になるだろ。」
「うん。ごめん……。」
「わかったらもう、別の時代で生きたいなんて言うなよ。謝んのも終わり!」
和真はメガネをはずして、袖で涙をぬぐう。
その姿がまるで、泣き虫だった幼いころの和真のようで、なんだか懐かしくなった。
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