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「そういえば和真、あのアプリどうしたの?」
「ああ、消したよ。」
「えっ、何でだよ。また昔の日本に行ってみたいじゃん!」
ちょっと日本史のことを勉強したら、その時代の人たちに会ってみたいって思うようになった。
和真も「トリップしてその時代のことを勉強したい」とか言うと思ったんだけどな。
すると和真は大きくため息をつく。
「あのな。今回は幕末の問題だったから江戸時代に行けて、なんとかうまく生活できたけど。戦国時代とかだったらもっと危険な目に合ってたぞ。」
「えー、織田信長に会うとかできないの?」
「バカ、信長がおれらと会ってくれるはずない。帰れなくなって積みだ。」
「会ったこともないくせに決めつけんなよー。」
まじめで慎重な和真らしい発言に反論すると、和真もさらに言い返してきた。
性格が正反対だから言い争いになるけど、こんなの小さいころはしょっちゅうだった。
むしろ今は、こうして思っていることを言い合えるのが楽しいって思ったり?
おれは横目でタブレットを見ながら、夢のような不思議な体験のことを思いだす。
だけどきっと夢じゃない。だっておれたちは、あの時代で知ったことをしっかり心に刻んでいる。
もうトリップできないのはちょっとだけ残念だけど、和真の言う通りこれ以上は危険だよな。
「でも、けっこう楽しかったよなぁ。」
つぶやいた言葉は、和真には聞こえなかったみたいだ。
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