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ふんいきは勉強系のゲームっぽいけど、それにしてはやけにシンプルで、タイトルと問題、それから回答欄しかない。こういうゲームってキャラクターが楽しく動いたり、ヒントのボタンがあったりするイメージだった。
それから、他のアプリとかの広告もないし、どこの会社が作ったとかそういう表示もメニュー画面もない。
つまり、今のところ「ものすごく怪しいアプリ」ってわけ。
こんな怪しいアプリを、あの和真がダウンロードするだろうか。
しかもアイツ、こんなアプリに頼らなくたって勉強できるはずだし。
モヤモヤすることが多くて、腕を組んでいろいろ考えてはみたけれど頭が爆発しそうだ。
時間だけがどんどん過ぎていく。
やがて玄関からガタガタと音がして、二人分の「ただいま」という声が聞こえてきた。
母さんと……和真じゃなくて、父さんだ。仕事から帰ってきたらしい。今日はいつもよりちょっと早いけど、母さんのメッセージを見て急いで来たのかな。
階段を降りてリビングで二人の表情を見ただけで、和真がまだ見つかっていないことがわかった。
「どうしよう……もう警察に連絡したほうがいいかしら。」
「でもまだいなくなって二時間だろ? 警察におおげさだって思われるんじゃないか。」
ネクタイをゆるめながら言った父さんを、母さんがキッとにらむ。
「いつからいないのかわからないんだから、二時間より長いかもしれないじゃない。」
「……いつからいないのかわからないって、それがそもそもおかしいだろ。きみは家にいたんだろ?」
普段はおだやかな父さんが、めずらしく母さんに言い返す。母さんはまた涙目になった。
「そうだけど、本当にいつの間にかいなくなってたのよ!」
「家の中にいないんだから、玄関を出て行ったんだろ。通ったのに気づかなかっただけじゃないか。」
「だって和真のクツだってあるし、裸足で出て行ったって言うの? おかしいわよ……。」
泣き出した母さんと、ため息をつく父さん。
二人がケンカしているところなんて、初めて見た。
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