インコ

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 部屋に寝転んで窓の明るい日差しを眺めていると、インコが突っ張りポールの上から独り言を言っている。  ぶつぶつというそれを聞くと、人間の話す言葉以外の音になんとなく癒された。  悪意のある言葉を理解することは結構つらい。  インコはときどき、いんちゃん、あめい、と以前から言っていた言葉を話すが、やっぱり意味不明で、笑えて来る。  父が数年前、事故を起こして相手が重傷を負ってしまった。  テレビでも報道され、街中でも噂になった。  ネットでは自宅の住所、父の勤務先、家族構成と通う学校、当然本名も晒された。  母はすぐに離婚して家を出た。あなたのためよ、と一緒に連れていかれた。  名字を変え、住所を変え、学校も変えさせられた。  隠れるように暮らしたが、たまに気づく人もあった。  父も勤めていた会社を辞め、今は地方で暮らしている。  賠償金が大変な額で、聞いたときは父ひとりで一生かかって返せるのか、と疑問だった。
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