罠を仕掛けてみる?

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「響君、顔が赤いよ」 「暑いんだよっ」 仕事中に誰にも見えない場所で、キスをされた。自分でしてきたくせに、目の前にいる男の子は顔が赤い。 暑いだなんて、嘘だ。季節は初夏で、もう少しで梅雨開けするのかな? という時期。 今日は梅雨の中休みで、晴れていて気温が高めだ。少し肌寒いと思う位にクーラーが効いている。 「響君って可愛いね」 「可愛い? ……ふざけんなよ」 私が働いている場所は、高原にあるオーベルジュ。オーベルジュとはフランスが発祥。簡単に説明すると宿泊も出来るレストラン。ホテルと違う点は宿泊がメインではなく、あくまでも料理がメインだということ。 宿泊施設は温泉の貸切風呂が各部屋に付いていて、ツイン又はダブルの部屋が合わせて10室ほどあるのみ。 美味しい料理を心ゆくまでゆっくりと堪能し、壮大な高原の景色と温泉で日頃の疲れを癒すことが出来ると平日祝日関係なく好評だ。 宿泊している方のみではなくランチの営業もしていて、全国各地からの観光客も多数の為、後に控えている夏休み期間中にもなれば更に慌ただしくなる。 オーベルジュ施設の外には教会があり、挙式も挙げられる。同じ敷地内にレストランウェディング用の会場もあり、少人数での式を挙げられる。 私は深澤ひより、オーベルジュには高校卒業後から働いている。現在、22歳。 一緒に居る男の子は水野響君、同い年。 私は勤めて四年と少し。響君はもうすぐ一ヶ月目の新人。東京から来たらしく、バーテンダーだったらしい。私と響君はレストランスタッフとして働き、夜は交代制でラウンジのシフトも入っている。 響君は目鼻立ちがはっきりしている顔立ちでスタイルも良く、まるで雑誌やテレビから抜け出してきたモデルみたいに見える。髪型も東京の美容室で切ってます、みたいな? 田舎にも見た目が格好良い人は沢山いると思うけれど、雰囲気も後押しして、響クンはさすが東京育ち! な感じがする。 つまり、田舎暮らしが長い私から見たら垢抜けてると言う言葉が当てはまる。
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