夏祭り

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夏祭り

「じゃあ、明日6時に迎えに行くよ」 「うん、分かった!」  高校2年生の拓実(たくみ)と私、莉菜(りな) 同じ高校に入学して、サッカー部に入部し、知り合った。私は、サッカー部のマネージャーなのだ。 高校1年の5月から付き合い始めて、2度目の夏。 午前中の練習後、午後から準備をする。  電車に乗って、夏祭りに出かける約束をした。 去年は、近所の神社の夏祭りに出かけたが、いつもより出店は少なかった。 それでも、浴衣姿を見て欲しくて、紺地にピンクや紫、青の朝顔があしらわれた可愛い浴衣に薄紫色の帯を合わせた。私1人では着れないので、母に着付けてもらった。  そして、今年もまた、浴衣姿を拓実に見てもらおう!と張り切って新調してもらった。 去年とは違って少し背伸びをしたかったから、レトロモダンな柄にした。 白地に赤や紫の牡丹の花があしらわれ、帯は、黒とシルバーでグッと大人っぽく。 去年は、『可愛い〜可愛い〜』って言ってくれていたが、今年はどうかなあ? 少し刺激的かなあ?  朝顔の柄には、支柱にしっかりとツルを絡ませることから、『固い絆』『愛情』といった意味が込められているらしい。 牡丹は、『幸せ』や『富』、『女性の美しさの象徴』とされているようだ。  ただ、今年は遠くまで行くから、下駄で足が痛くならないかが心配だ。出来れば、楽なサンダルで行きたいが、せっかくココまで用意してもらったから頑張るしかない。  お化粧をして、髪もアップにして、拓実を待つ。 〈着いたよ〉メッセージが届く 「あ、来た! 行って来ま〜す!」 「え? 来たならインターホンを鳴らせばいいのに……気をつけてね〜」と母。親公認の仲だ。 「は〜い」
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