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「¢£§¢£§¢£§……¢£§¢£§¢£§……」
コンピューターはこちらに、何かを語りかけるように鳴り続けている。しかしながら、さっぱり意味が理解できない。
そうこうしているうちに、二台のドローンが飛んで来た。
コンピューターと同じ紫色に塗られた小型飛行機は、値踏みするように桔平たちの周囲を舞い、そしてこちらが動き出す前に、青色光線を浴びせてきた。
「ギャーーッ!!」
「グッ……くそっ! またやられた!」
それは芥山のピンクボールが放った光と、同じものだった。
光線には対象の自由を奪う効果があるようで、さしもの拓海も身動き取れなくなる。
直立不動のまま固まる、二人の人間。硬直し痙攣する肌を、光線がゆっくりと走査してゆく。そうして頭のてっぺんから爪先まで、全身くまなくスキャンされてしまった。
敵はどこからか監視していて、捕まえた人間を食材にするつもりだろうか?
「ヒイィィッ! 俺は食べても、美味しくありません! 先に拓海から、どうぞ!」
「おい、桔平!」
「じょじょじょ、冗談だよ! これぞエイリアンも抱腹絶倒の、宇宙ジョーク! ……なんちて」
「一ミリも笑えないぞ!」
醜い言い争いをしている最中、新たな振動が足裏に走った。
近くの床がスライドして、小部屋ほどの空間が出現する。そこから、スモーク状の冷気が噴出してきた。
身体を覆い隠すほどに放出された、大量の白いモヤ……ひんやりとした煙の中から、氷漬けのシルバーカプセルが浮上してきた。
それは見たまんま、冷凍睡眠装置、そのものな形状をしていて。
「なっ……なっ……なっ……!」
桔平は口をあんぐり開けたまま、その機械を凝視する。
カプセルは、空気が抜ける解錠音を響かせつつ、卵が割れるように蓋を開いていく。
気づけば知らぬ間に地鳴りが止み、金縛り光線からも解放されていた。
自由になった桔平は、おずおずと近づき、カプセル内をのぞき込む。
そこで眠る、生命体の姿は――想像とは、かなり違うものだった。
「わあぁぁ……っ!」
寝台に横たわっていたのは、びっくりするほど美しい男性だった。
外見は人間と瓜二つで、二十代前半くらいに見える。
モデル並みに高い身長、すらりと伸びた長い手足。人形のごとく、整った容姿。
真っ白な素肌はパウダースノーをまぶしたように透明感を放ち、一つとしてシミや傷で汚染されていない。
物凄く、人間離れしている。神様が作った、芸術作品のようですらある。
「すっ……すっげぇぇ……! アンドロイドみたいだ……!」
これは、血の通った人間なのだろうか。
わずかに染まった桜色の唇からは、かすかに呼吸音がしている。
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