【1】男の子の半分はロマンでできている

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【1】男の子の半分はロマンでできている

 風光明媚な山林の地方都市、星河市(せいかし)。  星が綺麗なことで有名なこの街の郊外へ、クリスマスイブの日の明け方、宇宙からの飛来物が落下した。  地元メディアの報道によると、落下物は隕石、もしくはスペースデブリの(たぐい)と見られ、大気との摩擦で燃え尽きていなければ、何らかの残骸が残されているだろうとのこと。  落下地点は、住宅街の外れに位置する芥山(あくたやま)の中腹。登山道やキャンプ場が整備された、行楽地として人気のスポットだ。  ただし現場は傾斜の急な山肌で、市や警察からは「一般人立ち入り禁止」との通達がなされた。  同日午後、芥山入り口。  星河高校二年生の秋本桔平(あきもときっぺい)は、緊急招集をかけたクラスメイト二名を前にして、絶句した。 「お前ら、なんだぁ? その格好」 「申し訳ありません秋本氏。隕石捜索の件は、辞退させて頂きたく」 「止むに止まれぬ事情ができたのであります」  桔平の前で平身低頭して手を合わせているのは、二名の男子生徒。陰気な痩せぎす体型の橋本と、体重百キロ超えの巨漢、田中だ。  この二人と桔平はクラスの身分制度(ヒエラルキー)では底辺に当たり、教室の隅で身を寄せ合い、ズッ友同盟を結んでいる間柄だ。  インドア派の彼らは、最初から桔平の誘いに難色を示していたが、「どうせお前らイブに予定なんてないだろ」という突っ込みに心(えぐ)られ、自暴自棄的に冬山登山を決意したのだった。  駆り出された橋本たちが、渋々参加しているのは、わかる。だがそれ以上に、彼らの出で立ちは奇妙だった。 「おい橋本。お前の、その格好……ピンクのTシャツに黒ジャケットって、一体何を狙ったオタクファッションなんだよ?」 「ヒィィ、おやめ下され! 折角あつらえた、拙者のスタイリッシュ一張羅が!」 「田中も田中だ。サスペンダーパンツにクソデカ蝶ネクタイとか、売れないお笑い芸人でも目指してるのか?」 「フゴッ、引っ張らないでくださいまし! 無体なゴムパッチンをされると、乳首が! 乳首が!」 「てめえら、何か隠してるだろ! 非モテのお前らに予定が入ること自体、怪しいし……たくらんでること吐け、オラッ!」 「あーれー! 暴力反対でありますぅ~!」  自分より縦も横も大きな橋本たちを相手に、(ひる)むことなく強気で詰め寄る桔平。  やんちゃな子猫を思わせる容姿、そのままに、彼らを睨み、噛みつこうとする……その背後で、ザリッと砂利を踏む音がした。
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