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解けない探偵アーロック・オームズ登場!
「犯人は‥‥…」
大広間に集められた容疑者たち。
ぼくに当たるスポットライト。
みんながぼくに注目している。
これこれ!
これぞ、探偵のだいご味。一番の見せ所だ。
そう。犯人当て!
「犯人は……」
静まり返る部屋。
緊張の一瞬。
みんなの心臓の鼓動まで聞こえてくるみたいだ。
「そう! 犯人は!」
ぼくはハットに手を当てて、ステッキをクルリと回して見せる。
そして、不敵な笑みを浮かべて、ズバッと犯人を言い当てるのだ。
「犯人は、おま……」
……あれ?
「おま……」
おかしい。
う、腕が、上がらない!
「お前が犯に……」
声も、上手に出せない!
「お前が……お前……」
ああ、もう!
まただ!
またあいつのせいだ!
ぼくはとっても優秀で、もう犯人が分かっているのに、あのわがまま作家のせいで犯人を言い当てられないんだ!
実は、ぼくは、とある作家の物語の登場人物。
そして、今日も、作家のあやつり人形みたいに、自由に謎を解くことができない。
ぼくの名前は、アーロック・オームズ。
謎が解けない探偵なんだ。
まったく……。
物語のキャラクターを演じるのも、楽じゃないよ。
試しにもう一度やってみよう。
「犯人は‥‥…お前だ!」
あーあー。
ほら。また全然違う人を指さしちゃったじゃないか。
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