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ゴッホン。
みんな注目してほしい。
さっそくだが、自己紹介だ。
ぼくの名前は、アーロック・オームズ。
言わずと知れた少年名探偵さ!
どんな謎も解いてしまう天才ハンサム探偵なのだけれど――。
肝心の相棒である作家が、これまたどうして簡単な事件しか用意してくれなくて……。
相棒は誰かって? 冒頭からペチャクチャうるさかったあの女流作家さ。
彼女の見た目? 見た目はまあ……まあまあかな。
こ、この話はもうやめておこう。
さて、本題に入ろうと思うけど、準備はOK?
ぼくは今、どこにいるでしょうか?
事件現場?
不正解。そのもう少し前。
僕は今、事件現場に向かうために、落下中だ。
そう。落下中。
さっき、彼女に突き落とされちゃったから‥‥…え、え、エエエエエエッ!
落ちてる! 落ちてる! 落ちて‥‥…グヘッ!
フゥ……。危なかった~。
どうやら、木にひっかかったみたいだ。
あ~あ。せっかくの高級コートが、破れてく? ビリ。ビリビリビリ……っと。待て、待ってくれ!
ドンッ……ィテテテ。
尻もちだ。もう! いつもクールなぼくらしくない!
あいつ! 何てことしたがる!
たまたま植木に引っ掛かったからいいけど、そのまま地面に落ちていたら、死んでるところだったぞ!
やれやれ。
まったく、ぼくは運が悪い。物語の登場人物は作家を選べないからね。最悪の相棒と組まされてしまったよ。
ぼくは体中についた葉っぱを払って(お気に入りのコートが!)、とりあえず、辺りをうかがうことにしよう。
今日の謎解きの舞台がどこなのか。まずはそこから知らなければならない。
ふむふむ。なるほど。
今は夜。天気はくもり。気温は少し肌寒いって感じかな。あそこのカエデがまだ色づいてないから、秋の始めってとこだね。
ここは大きな庭園で、あそこに見えるのがお屋敷――。
デカッ!(ちょっと大きすぎだ)
西洋風のすっごい大きな屋敷だ。お屋敷というよりも城のようだ。
ライトアップされて、おごそかな雰囲気が増している。おおよそ、伯爵か侯爵の屋敷なのだろう。
僕はここで、手に持っていた虫眼鏡をしまって(実際、あまり使わないからね)、コートの中に入っている一枚の紙を取り出した。
これはいつも、作家でもあり相棒のうるさい彼女が用意しているもので、物語の設定について簡単に書かれている。
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