7人が本棚に入れています
本棚に追加
頭字要注意?
かしらじ……ずじようちゅうい……。
まさか、あいつ、『頭上注意』の間違いだな。また漢字変換を間違えてる。あれほど、誤字脱字には注意しろと言ってあるのに。
それに『恋の行方やいかに』――。
嫌な予感しかしない。
ぼくは純粋に謎解きがしたいだけなんだ。それなのに、いつも余計な恋愛ゲームに巻き込まれてそれどころじゃなっくなってしまう。
それに、相手はいつだって――。
はぁ……。今は考えないでおこう。
下の数字は何だろうか。
122132――。
電話番号? それとも、何か別の意味が。メモ書きを消し忘れたなんてことも。それはないか。いや、漢字を間違えるようなやつだ。ありえなくもない。
それに、嵐? 雨なんか降ってないじゃないか。いや、待てよ。急に雲行きがあやしくなってきた。
これは、まさか――。
ゴロゴロゴロ……ッバアアアアンッ!
「ウワッ!」
突然の雷に、思わず驚いてしまった。別に、雷が怖いわけじゃ……(バンッ!)ウワッ!
おかしい。雷がこんなに怖いわけないはずなのに……。
アッ! もしかして!
「おい!」
ぼくは黒い雲がうごめく空に向けて叫んだ。言いたいことがあると、いつもこうする。
「おーい! 聞こえてるのなら返事をしろ!」
「うるさいわね。あなたがお屋敷に入らないと何も始まらないのよ」
空が割れ、ぼくの相棒がこっちを見おろしている。
「雷が怖いなんて設定、聞いたことがないぞ!」
「さっき付け足したの」
な、なんてことをしてくれるんだ!
「最近、あなたが少し生意気だったから、プロフィールに書き加えておいたの」
「消せ! 今すぐ!」
「や~だよん。消してほしかったら、大人しくわたしの言うことを聞くことね。行くわよ~。ゴロゴロゴロ……」
「あ、ちょ、待って!」
「ドッカーン!」
「ウワァァァ!」
残念ながら、この世界は彼女のものだ。なぜなら、彼女が作った世界だから。雨も雷も自由自在。
「あ、お母さん! 今、わたし……。分かったよ、今行くから! それじゃあ、ミスター・オームズ。話の続きでまた会いましょ~う」
「待ってくれ!」
「あ。コートだけは直してあげる。トレードマークだからね」
彼女はいなくなってしまった。空が閉じた。
破れたコートはいつの間にか新品に戻っている。
これだから作家という生き物は。好き勝手に見た目や能力を変えられるキャラクターの身にもなってほしいね。
この際だから言うけれど、ぼくはもう少し身長が欲しいんだ!(まあ、顔はなかなかハンサムだから文句はないけど。「チビ」とか「小さいやつ」って言ったら許さないからな!)
とにかく、雨風もひどくなってきたし(雷も怖いし。本当は怖くないけど!)、屋敷に入れてもらおう。
『頭上注意』だ。
ぼくは急いで屋敷へと向かった。
最初のコメントを投稿しよう!