物語の始まり。集められたゲストたち

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 ぼくは執事に断って、広間の隅に移動した。そして、相棒にこっそり問いかける。 「登場人物が多すぎるぞ。いつも色んな人を登場させて、結局回収できないじゃないか」  すると、クリスティーヌの声がひっそりと聞こえてきた。 「今回は大丈夫なの。ほら、主催者が来たわよ。物語に戻って!」  彼女の声がすうっと消えた。  すると、この屋敷の主人が大階段を駆け下りてきた。 「アーロックさん!」  立派な礼服を着ているが、飛び出たお腹は少しだらしない。とは言え、あごに蓄えたひげやきりっとした眼つきから侯爵としての威厳は感じられる。 「ようこそ、いらっしゃった。わたしがこの屋敷の当主、スミス・グリーリッシュです」 「探偵のアーロック・オームズです。本日は、お招きいただきありがとうございます」  ぼくはハットを脱いで、一礼した。 「お嬢様のお誕生日、心より祝福申し上げます。急な招待で、何も用意できていませんが、どうかお許しを」 「いやいや。こちらが無理を言って来てもらったんだ。それにしても、とんでもない誕生日になってしまったよ。警察もこの嵐で足止めを食らっているようだ」  そう言いながら、スミスは声を上げて笑った。大切なお宝が盗そうなのに、呑気な人だ。 「スミス!」  ゲトーが立ち上がり、ぼくたちのところへやってきた。 「ゲトー! 久しぶりだ! 随分老けたな」  と、スミス。二人はハグをして、笑い合った。 「何年ぶりだと思っている」 「ゲトー。家族は元気か。いつか会ってみたいものだ」 「ああ、元気だ。妻と子どもたち四人、みな元気だ。下の子たちなんか、かけっこでは誰にも負けないよ。まあ、一人はちょっとな……」 「というと?」 「娘が一人、思い病気を患ってしまって。どんな医者も治せない、どんな薬でも治らない。困ったものだよ。一つだけ方法があるのだが……とても高価で貴重な薬なのだ」  ゲトーはそう言って、オウラの方を見た。オウラはゲトーの視線に気づいたが、すぐに視線をそらした。 「彼女に似て、ずっと病気なんだ」 「お前ほどの男でも買えない薬とはな。困ったことがあったら何でも言ってくれよ」  スミスはゲトーにぼくを紹介した。 「こちらが、探偵のオームズさんだ。例の件でわざわざ来てもらったのだ」 「はじめまして。聞いていたよりずいぶんと小さいので驚きましたよ」 「ハハハ。よく言われます」  ウググググッ!   小さいと言われてすごいくやしいけど、ここは我慢だ。大人のふるまいに徹しなければ。  さっきこの人を紳士と言ったのは撤回だ。ただの嫌味なおじさんだ。 「プフッ」  相棒が鼻で笑う声が聞こえた。うるさいッ! 「スミス。探偵さんも到着されたことだ。さっそくだが、その予告状とやらを見せてもらえるか」  『探偵さん』って言い方。間違いなくぼくをバカにしてる。今に見てろ。必ずぼくのかっこいいところを見せてやるからな。 「ぼくも見たい!」 「こら、クリミオ!」  クリミオが駆け寄り、引き戻そうとストナもやってきた。 「みなさんにご覧いれようではありませんか。オウラちゃんに、メイドたちも」  みんな、スミスのところに集まる。スミスは胸に手を入れ、一枚の封筒を取り出した。
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