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第一章
感情共有システム(emotion share system)が開発されたのは今から20年前だ。僕はそのシステムが世界に発表された当時はまだこの世に生を受けていなかったので詳しくはわからないが、当時の衝撃は相当なものであったらしい。
他人が抱いた感情を共有できる。
その画期的な発明は世界を震撼させた。発売当初はそのアプリケーションソフトウェアとヘッドエモーションがセットで200万という高額だったのに関わらず、多くの人が購入した。発売一年間で販売台数1000万台。これは驚異的な数字だった。
後にコミュニケーション革命と呼ばれるようになったこの年、人類の他者との関わり方は確実に変化した。
発売当初は法律の整備も進んでいなく、人体に、特に脳にどんな影響が出るのか調査も間に合わず、ある意味で無法地帯の期間があった。それから発明会社の悪用しなければ人体に悪影響はないという報告や、それに反対する研究機関や識者と呼ばれる人が現れて、ニュースやドキュメンタリーでもこの新しいコミュニケーションツールをどう扱えばいいのか語り合われた。
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