第一章

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 折原が教室に足を踏み入れると一気に空気が弛緩した。彼が身にまとっている空気は穏やかで、それが周りにも自然と伝染するようだ。空気を変えてくれた折原に一瞬感謝しそうになるが、そもそもの原因が彼にあることを思い出してやめた。  二股なんて最低の悪事だ。今まで甘い思いをしてきたのだから、せめて最後はその罪の報いを受けるべきだ。いや、受けて欲しい。そうでなければ納得できない。  そう思っていたら、折原雄矢は少し驚いた顔をしただけで、微笑みながら宮崎の隣に座った。 「どうしたの?」  この状況に似つかわしくないあまりにも落ち着いた声。イケメンは声もかっこよかった。  折原と宮崎が見つめ合う。この状況でも宮崎は頬を赤くして照れたように笑った。 「えっと、いま部活終わったんだよ」 「教室から見てたよ。頑張ってたね」  えへへと宮崎は笑った。 「もうすぐ県大会が始まるから練習も多くなってるんだ」 「頑張ってる姿もすごく綺麗だった」 「ありがとう」宮崎は照れたように自分の髪をいじる。「けど、夏に練習が多くなるとやっぱり日焼けもひどくて」 「努力の証でしょ? それに日焼けしててもかわいいよ」
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