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折原が宮崎の頭をぽんぽんと叩く。
……なんですかこれは。
呆然とその光景を見ていたら、五季が肩を怒らせながら折原の隣に行き、椅子を叩き潰すんじゃないかと思うほどの勢いで腰を下ろした。大丈夫だ。彼女は折原の雰囲気に惑わされず、きちんと真実が見えている。
「どういうこと?」五季は低く、冷たい声で言った。
「こらこら、せっかくの可愛い顔が台無しだよ」
イケメン折原はそう言うと五季の眉間に寄ったしわをそっと指でつついた。五季が照れたように頬を染めてうつむく。
「わたし、そんなに可愛くないよ」
背中を鳥肌が駆け抜けた。
いきなり机の向こう側の空気が変わった。三人がつくりだす空間はどこか甘ったるく、それでいて周りの人間が立ち入るのを許さないものだった。当初の殺伐とした空気はどこへ行ったのやら。
僕は雨宮を見る。雨宮も呆然とした顔を僕に向けた。
……帰ろうか? 視線でそう伝えると、雨宮も頷いて同意を伝えた。
つき合ってられない。そう思って立ち上がろうとしたら、五季が肩を震わせて立ち上がった。
「って、そんなことで誤魔化されるわけないでしょ!」
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