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五季の顔は喜びと憎しみが混ざったような複雑な顔をしている。怒りを思い出して笑顔を抑えつけようとしているらしい。誤魔化されそうになったのは誰の目にも明白だ。
折原は不思議そうに首を傾げる。
五季は唇を震えさせながら怒鳴った。
「二股してたでしょ!? わたしとその子で。もうわかってんだからね。どっちかが本命でどっちかが遊びでしょ!? 好きだっていう感情も本命に対しての感情をもう一人の子に送っただけでしょ!?」
五季はそう一気にまくし立てた。
納得する。確かにそれなら二股しても直結しないかぎりバレる可能性は低い。本命に対して持っている好きという感情を遊びでつき合っている子にも送れば、遊びの子も自分のことを本気で思ってくれていると信じるはずだ。
けど、それを言うならこの二人のどちらかは折原にとっての本命ということだ。果たしてどちらが。
「両方とも大好きだよ」
平然と言う折原の言葉に僕は驚いた。こんなに表情を変えずに異性に好きという気持ちを伝えられるとは。折原という人間は根本的に僕とは違うらしい。
五季は鋭い視線で僕を見た。
「とぼけるなら今ここで本命を明かすから」
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