第一章

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 そういうことか。  自分がここにいる理由がわかった。僕は雨宮とともに機材の準備を始める。と、そこでふと手が止まる。こんな状況で遊び相手だったとわかった女の子は傷つくんじゃないだろうか。こんな人が多くいる場面で、本命はお前じゃないと告げられたら立ち直れないんじゃないか。  そう危惧して五季華音と宮崎紗織の表情をうかがう。さっさとしろというように五季は睨んでくる。おどおどしていた宮崎ですら自信満々の表情で僕らの準備を待っていた。  どちらも自分が本命であることを疑っていない。僕はそっと雨宮を見た。雨宮は嫌悪感丸出しで折原を見ている。  どうしたものか。けど、そもそも自分と折原が両思いかどうか知りたかったら、本人同士が直結して確かめればいいだけだ。それをしなかったということは、こうして僕らがいることにも意味があるのだろう。いや、待てよ。そもそも直結もどこまで信用できるのだろう。直結している最中に別の人間を思って好意を誤魔化すこともできるのだろうか。  直結をすることがどうにも苦手な僕にはわからなかった。  今度部活で調べてみるか。
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