第一章

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 もしかしてそういうことなのか。今まで二股かどうかを調べてきたが、実際にはそれは完全ではなくて、もう一つの存在、もう一人の存在が抜け落ちていたのだろうか。つまり真実は折原雄矢は三股をしていたということなのか。  いや、でも最後に加わった一人はどうにも今までと様子が違う。外見のことを悪く言うのは失礼なことだが、それでも五季華音、宮崎紗織と比べたらだいぶ見劣りする。それでも、折原は彼女のことが本気で好きだと言うのだろうか。  ……もうどうでもいいよ。 「じゃあ、どうぞ」  折原はヘッドエモーションを小太りの女子生徒に渡す。そして僕を見た。はいはいわかりましたよ。やればいいんでしょやれば。ほら。でましたよ。 「両思いでした」僕は投げやりに答える。  おい。本当なのか。まさかの三股なのか。しかも全部両想いなのか。 「ちょっと待って。これ壊れているんじゃないの?」  信じられないといった様子で雨宮がそう言って小太りの女子生徒からヘッドエモーションを受け取る。 「尾道くんちょっとわたしたちで試してみよ」 「え?」突然の雨宮の提案に素っ頓狂な声が漏れた。
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