第一章

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 けれども危険性よりも有用性のが高いと考える人は多く、徐々に、けれど着実にこのシステムは社会に浸透していった。  就職の面接や介護、教育などで使用する団体も出始め、毛嫌いする人はいる中でも、その存在を無視し続けることはもはやできなくなっていた。  20年後の現在は価格も3万円程度になり、高校生になればほとんど自分用のヘッドエモーションを持っているし、持ってない子でも家には必ず一台ある。それに高校では必修科目として感情共有システムを使った授業が組み込まれているので、たいていの子が慣れた手つきで扱うことができた。  慣れているというより、もう生活の一部分となっていた。  だから僕が雨宮光奈に出会い、さよならを告げたあとにすぐにしたことは自分の感情を保存することだ。毎日ではないにせよ何かが起こった時には感情を保存して日付とコメントを載せておく。  そうしておくとふとした時に過去の感情を振り返ることができる。ちなみに僕が雨宮に感じた感情の区分は『戸惑い』だった。きっと突然のことに色々と戸惑っていたのだろう。
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