1人が本棚に入れています
本棚に追加
つまりはそういうことなのだろう。にわかには信じられないが、折原と三人の女子生徒は本気の恋愛感情で結ばれている。
雨宮は唇に手を当てて思案する顔になる。
「ちょっとさっきの折原さんの三人に対する感情を体験してみてもいいですか?」
折原は肩をすくめる。雨宮はパソコンを操作する。
「どうしたの?」僕は訊いた。
「両想いっていうのはそうかもしれないけど、これは単純に好きか嫌いかで語れることじゃないと思うんだよね」
「どういう意味?」
「だって好きっていう感情は同じ好きでも色々あるでしょ? お母さんのことが好きと、ご飯を食べることが好きなのは、同じ好きだけど違う感情でしょ?」
僕は考える。確かに同じではないと思うけど、どこがどう違うかと訊かれたらすぐには言葉にできない。
「それは、そうだね」
「だから折原さんは確かに三人に対して恋愛感情を抱いているかもしれない。けど、その感情はそれぞれ違うはず。それを確かめたいの」
雨宮はヘッドエモーションを装着する。そして順番に感情を体験していった。
そして静かにヘッドエモーションを外す。しばらく何も言わずに黙っていたので、僕も折原の感情を体験した。
最初のコメントを投稿しよう!