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一つずつ。それぞれ折原が三人に対してどんな好きを抱いているかを感じる。
ああ。そういうことか。
雨宮を見る。目が合い、自然にお互い頷く。
雨宮は口を開く。
「確かに折原さんは三人に対して本気の恋愛感情を持っていると思います。だけど、その種類はやっぱりそれぞれ違いました」
折原の眉が動く。
雨宮は戸惑った表情になる。このあとどうすればこの場を誰も傷つけずに収められるか考えているようだった。
三人に対する感情は同じものではない。どこがどう違うのかは今の僕では説明するのが難しい。けど、きっと折原は三人にそれぞれ異なる魅力を感じて、それに惹かれて好きになったということなんじゃないだろうか。
横目で雨宮を見る。きっと彼女は僕よりも深くこれらの感情を理解している。なぜだかそう思えた。
誰も何も喋れない。
奇妙な空気の中で一人肩を振るわせている人物がいた。五季華音は立ち上がる。その顔は怒り以外の感情を削ぎ落としたかのように見るものを震えさせた。
「ふざけないでよ!」
先ほどまでのぬるい空気を吹き飛ばすような怒声。五季はその言葉を残して教室を飛び出していった。
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