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五季がぶちまけた怒りを意に介せず折原雄矢は二人の女子と微笑み合っている。二人の女子も嬉しそうに微笑み返す。理解に苦しむが、この三人はこの関係を良しとしたのだろう。
雨宮が五季を追いかけるように教室を出ていったので、僕も機材をまとめてその背中を追いかけた。
教室を出ていく時に肩越しに振り返る。僕らがいなくなった空間が既にピンク色に染まっている。おいおい。それでいいのか二人の女子よ。
複雑な感情を抱きつつ、それでも僕には関係のないことだと思って雨宮の姿を探す。
雨宮は空き教室から少し離れたところで五季の背中をさすっていた。五季は感情が高ぶっているのか荒い呼吸を繰り返している。
「あんな奴を好きだったなんて、悔しすぎる」
五季は唇を噛んだ。
何か声をかけるべきかと思うが、いい励ましの言葉が思い浮かばない。
「まあ、いいじゃん。早めに気づけただけ傷は浅いよ」雨宮が沈痛な面もちのまま、それでも幾らか明るく言った。
「それはそうだけど」
「あんな奴のために落ち込む必要ないよ」
雨宮の言葉に五季はちょっと驚いた顔になり小さく笑った。
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