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僕、尾道陽介と雨宮光奈が通う県立高校は都心から離れた山の中腹にある。卒業後の進路は半分が就職で半分が進学。どちらもほどほどの成果を残しているらしく、受験での人気は高い。
古い鉄筋コンクリートの校舎。老朽化が目立ち始め、3年後に改築工事をすることが決定している。
「部長だから部活がないときもああやって色々と準備してたの?」
並んで歩きながら雨宮が質問を投げかけてくる。
「部長だからと言うよりも好きだからかな。去年も立候補してやってたし」
「へーそうなんだ」雨宮が感心するように言った。
少し逡巡したあと、僕は気になっていたことを雨宮に訊ねる。
「なんでこんな時期に入部しようと思ったの?」
5月の末。
高校二年生というただでさえ中途半端な学年の、しかも5月というこれまた微妙な時期に部活動を始めようとする生徒は少ない。
個人的なことだっただろうかと表情を窺うが、雨宮は気にしていないように嬉しそうに微笑む。
「それは今になって興味が出てきたからだよ」
なるほどと納得する。
「それは何かきっかけがあって?」
「うーん」雨宮は小首を傾げる。「まあ、色々とね」
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