第一章

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 雨宮は受け取った冊子をぺらぺらと捲る。小さく頷いて目で中の情報を読み取る。 「すごいね。QRコードをつけて感情のファイルをダウンロードできたりするんだ」 「うん。だから最初は雨宮もこの部誌を読んで、自分がこの部活でどんなことがしたいか考えてみてくれる?」僕は頭を掻いた。「けっこう個人プレイというか自主性に任せちゃう感じの部活なんだけど」  僕は申し訳なくてそうつけ加えた。部活と言っても名ばかりで、結局はそれぞれがヘッドエモーションを使って興味あることを好き勝手しているだけだ。部員同士が協力することもあるが、週末に一回進捗状況を確認しあうだけで、あとはほぼ個人作業だ。 「去年こんなの出てたんだね。全然気づかなかった」  雨宮のその言葉を聞いて少し落ち込む。無料頒布しているけどやはり知名度は低いようだ。  僕の表情の変化を読み取ったのか雨宮は慌てて顔の前で手を振った。 「けど今読んでみたら面白そうだった。去年も知ってたら手にとってたよ。間違いないね」
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