第一章

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「で、でも、7月まではまったく問題なく使えるからね。もしかして昔の感情ファイル持ってたりする? それなら今の保存形式に保存し直すこともできるけど」 「あー。うん。そうだね。それは知ってるんだけど」  雨宮は言い淀んで、それ以上なにも言わなかったので僕は部で使用しているオンラインストレージのアカウントとパスワードを彼女に伝える。ボランティアで送られてきた感情がすべて保存されているが、当然僕のコメント付きのは自分用のオンラインストレージに鍵つき保存しているので僕以外の人が見ることはできない。 「一応フォルダ分けされてるから。それと部員以外の人に送ったりするのは禁止で」そう言ってから僕はつけ加える。「あと睡眠とかそういった感情は入ってないよ」  雨宮は面白そうににやける。 「なんだ。せっかく寝ようと思ったのに」  雨宮が空いている席に座ってパソコンを起動させる。それを見届けて僕も作業を始める。  パソコンを立ち上げてESS(emotion share system)を起動させる。頭にヘッドエモーションを装着する。
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