決着は夏の終わりに、

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「夏の夜は素晴らしいものが多い。夏のせいにして、こうした有意義(ゆういぎ)な時間を過ごせるのだから」  火の粉が散り終えた空を見つめながら、天沢がぽつりと言葉を落とす。  胸の奥がギュッと狭くなって、熱くなる。  どんな告白よりも、心に響いた。私と見た景色を、貴重な時間に入れてくれたのだから。 「……今度こそ、ほんとに負け。天沢がぜんぶ言っちゃった。もう、他になにも思いつかないや」  あーあと空を仰いで、ベンチからタンッと飛び降りた。  ズルいよ。勝って花火大会に誘う計画だったのに、全て持っていっちゃうんだから。 「来年の花火も一緒に見よう」  一瞬だけ、風も音もなくなって公園の時が止まった。聞き間違いじゃ、ないよね? 「俺が勝ったら言うと決めていた。有無は言わさん」 「それ、私で……いいの?」 「椎名がいいんだ。どうだ、ほどよい罰ゲームになるだろう?」  さらっと笑った顔に、降参の旗を上げる。  やっぱり、私は天沢のことが好き。顔や声はもちろん、不器用でえらそうでまっすぐな性格もぜんぶ。 「最っ高の罰ゲーム」  さっきより距離のない位置に座って、ドキドキ跳ねる心臓を押さえた。  そっと近づけた手を引っ込めて、二人空を見上げる。 「あ、流れ星!」 「どこだ?」 「もう消えちゃった。天沢、全然違うとこ見てるし」 「なんだと? 椎名が方位を言わないからだ」 「指差したじゃん。今度こそ、天沢に勝てますようにって祈っておいた」 「なに? 次はどんな勝負をするつもりだ」 「その賢い頭で、よーく考えてみて」  腕を組んで首を捻る姿に、耐えきれず吹き出した。  ──この恋の決着は、もうしばらく先になりそう。                 fin.
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