決着は夏の終わりに、

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「流しそうめん?」 「夏の夜の必須アイテムだ。うちはよく夕食に出てくる」 「ただのそうめんじゃなくて、流す方の?」 「竹で流さないと意味がないだろう。その過程で冷やされてさらに美味くなる」  納得できるような、どこかズレているような。そもそも、普通の家庭で竹から流すそうめんをやるなんて、100件中何件あるのかって話よ。  何往復したのか分からないけど、電車に乗ってからもずっとゲームは続いた。  天沢ったら、なかなか降参しないんだもの。これは強者(つわもの)だ。油断したら、こっちが負けてしまいそう。  結局、決着のつかないまま、私の降りる駅になってしまった。 「天沢強すぎ〜。すぐ勝てると思ったのに」 「俺を見くびってもらっては困る」 「ただのゲームだけどね」  内心、がっくりしている。だって、花火大会の約束をこじつけるはずが、そんな空気にちっともならなかった。  それどころか、天沢のやる気スイッチを入れてしまったらしく、絶対に負けないオーラがぷんぷんしていた。こんなの想定外だよ。 「続きはまた明日だな」 「えっ、明日もやるの?」 「当たり前だ。これは勝負だからな。互いの言ったワードも全て記憶しているから問題ない」 「……すご」  引くべきなのか、尊敬するべきなのか。まだチャンスは残っているのだから、良しと捉えるしかない。  ホームに降りて手を振りながら、ハッとする。  あれ……? これって、一緒に帰ったことになるんじゃ……?  一瞬にして夕焼け色に染まった頬は、人目をはばからず、しばらく緩みがおさまらなかった。
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