第五話 難易度超難の隣人

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第五話 難易度超難の隣人

「へー!ガク、お前、まだ大学2年生なのか つーことは、歳はえーと……?」 デュークが箒で掃きながら、ちりとりをしているガクにそう呟く。 ――デュークは、付き人であるギルバートに唆されて、人間関係超難コースを歩む地球の創造主である。 ガクはそんなメンバーの1人で、一行は、アパートの周辺を掃除するため、2人組で、アパートの玄関と裏庭に別れて動くことになった。 付き人であるギルバートは、101号室のメガネの頼りなさげな女性と。 そして、デュークはガクとくむことになっていた。 デュークの言葉に、ガクはしゃがみ込んだまま、答える。 「19っす。 ここ来たのは、大学生になった2年前からで。 俺、親もいないんで、保証人になってくれる人いなくて、どこにも行けなくて。 だから、このアパートに拾ってもらえて、ホントありがたいんすよ」 「へー……。お前も苦労してるのな」 デュークはしゃがんだガクの姿を見て、心の中で呟く。 ……さすが、難易度超難の地上だ。 ガクだけは普通の人間だと思ってたが、こんな過去を併せ持ってるとは。 やっぱり、地球はさっさと潰したほうがよさそうだ。 ――そのためにも、まずはバイトして生活費を……。 …まあ、ガクは他の人間みたく病んでないのを見る限り、他の奴らとは違って乗り越えてそうだな 「――て、聞いてます?創造主さん!」 ガクの声で、ハッと我に帰るデューク。「んあ?」 「もーお。 だから、創造主さんは何歳なんですか?」 「俺か。俺はなー……」 そう言いながら、ハタと言葉が止まるデューク。 そういや、俺は何歳だ? だいたい地球が生まれた年だから…… 「46億年だな」 「はぁ?」 「他の創造主どもは平均して50億だから、俺もやっと一人前だぜ!」 「あー、はいはい。厨二病っすか。長くなりそうなんで、この辺で止めときます。 さて、この一帯は終わったんで、ギルバートさんとこ手伝いましょ」 そう言った時、ギルバートと101号室のメガネの女性がアパートの裏から現れる。 「あ、付き人さん。俺たちもそっち行こうとして…終わりました?」 「ええ、お陰様で」とギルバートとガクが話す間、隣の女性は終始気まずそうに視線を泳がせている。デュークはそれに目ざとく気づけた。 なんでキョロキョロしてんだ? …はっはーん。男ばっかだから、居ずらいのか いち早く察知したデュークが助け舟を出そうと口を開いた時だった。 「立石 琴音さんもお疲れ様っす。」 先程までギルバートと話していたガクが、女性に話を振る。 立石 琴音と呼ばれた女性がびくりと肩を震わせて、警戒しながらガクをメガネ越しに見やった。 さらに、ガクが続ける。 「そういや、立石さん。毎回掃除来てくれますよね。 毎回、ボスも俺もありがたがってんす。しかも掃除早いし」 さすが、ガク。 女性にも気遣える男とは、なかなか―― 「…だって、居留守にしても、出てくるまでドアを叩き続けるじゃないですか」 「は?」「え?」 予想外の言葉に、デュークとギルバートが目を丸くしていると、ガクが悪戯っぽく笑って言う。 「へへ。 俺、部屋ん中に人いるのわかっちゃうんすよね!特に立石さん、いっつも独り言言うから、いるなって」 「いや、にしてもお前――」 デュークが言いかけるよりも、光並みの速さで、琴音がガクを振り返った。 「なんでそのこと――!本当に聞こえるか聞こえないかの音量なのに……!」 「耳いいんすよ、俺。 なんなら、立石さんの好きな人も知ってるっすよ」 「――!!!」 「え、誰だ?」 「や、やめてください!!」 デュークとガクの間に立った瞬間、琴音はデュークを見ながら、そこから言葉が途切れた。 「?」 呆然と虚空を見遣っている琴音を横に、こいつはどうしたんだ?とデュークはガクにこそっと聞く。 「あ、あの人っす。立石さんの想い人。」 視線の先を追うと、真っ黒な髪から覗く端正な顔立ちの男が、アパートを通り過ぎようとしていた。 デュークはその黒尽くめな男の横顔を見ながら、心の中で思う。 いかにも人間の女子が好きそうな見た目だぜ。 こんなんじゃ、同じ人間の、付き人顔代表ギルバートが可哀想だろ なあ、ギルバート?と隣を見やると、なぜかギルバートも琴音と同じように直立不動で男を直視していた。 「なんで、お前も見惚れてんだよ?」 その言葉に、心外だと言わんばかりに目を見開いて、ギルバートがデュークを見やる。 「あいつ、私の同期なんです」 「は?」 目ざとく聞いていた琴音が、大きく目を見開く。 「え?!?!」
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