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流水音が止まっている事に気付くと、菜実がバスルームから湯気をまといながら出てきた。バスタオル一枚に身を包んだ彼女の姿は、このメッセージを見た後だと余計無防備に見える。
「賢吾、どうしたの? 思い詰めたような顔して」
ベッドの上で肩が触れそうな位置に座っている二人。沈黙が流れる中、賢吾は同級生二人が殺されたことを今言うべきか悩んでいた。しかし、近場に潜んでいるかもしれない殺人鬼から身を守るためにも情報を共有すべきだという結論に至った。
「菜実……実は大変なことが起きた。嘘だと思うかもしれないけど聞いてくれるか」
賢吾の気迫に押されたかのように、「う、うん」という喉に詰まらせたような声が張り詰めた空気を震わせた。
「ショックだろうけど……ユキとヤスが死んだ。今さっき拓真から連絡あって、その……誰かに殺されたらしい。念のため菜実とも連絡とりたいって言ってたから無事だって返事してもらえるか。その……ごめん、今言うべきかどうか悩んだんだけど、菜実にも今後しばらくは警戒してもらいたくて伝えた」
菜実の表情が、徐々に歪んでいく。その顔を見ると遺体に妙な文字が刻まれていた事や、連続殺人犯による犯行の可能性があるという詳しい話はさすがに出来なかった。
「私たち……つい一週間前に再会したばかりなのになんで急にこんな事が……酷い……」
未だ濡れている髪に手を伸ばし、下心なく慰めるように抱き締める。濡れたままの髪を優しく撫でながら、賢吾は小学校からの同級生五人が十五年振りに再会を果たした同窓会を思い返していた。
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