同窓会

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「よっ、久しぶり。お前たち、なーんにも変わってねぇな」 「それって、モテまくってた小学校時代から変わらずカッコいいってことか? まぁ、昔一番やんちゃしてたお前はすっかり落ち着いたみたいだけどな」  大きな前歯を目立たせながら笑うヤスと、煙草の煙をゆっくり吐きながらクールに微笑む拓真。あの頃と変わらない二人の笑顔を目にしたせいか、学生時代の思い出がフラッシュバックする。 「あっ、ケン! ひっさしぶりー!元気にしてたー?」  ビールの入ったジョッキを持ちながらヤスの隣に腰を下ろした女性は、はつらつとした所が昔と全く変わっていないユキだった。腰まで長かった髪をバッサリ切っていたこと、化粧で目が大きく見えることが唯一変わった所だと感じる。 「ユキと会うのは中学の卒業式ぶりだな。あの頃の勢いはなくなったけど、まぁそれなりに元気にやってるよ」  あの頃は学校でも目立つ存在だったからか、自分が常に一番で、何をやっても許されると思っていた。田舎を出て社会を知り、ようやくこの歳になって自分の考えが愚かだったことに気付き始めたところだ。 「あとは、ナミが来れば五人集結だね。そうだケン、飲み物何にする? 幹事が来てないらしくてさ、みんな勝手に飲み始めちゃったの」  背後の人だかりを指差した由貴子。リキュールが並ぶカウンターへ目を向けると、馴染みの店だからか店主に声を掛けて皆セルフで酒を注いでいた。 「自分で取りに行ってくるから大丈夫。ついでに、隣クラスだったヤツらに挨拶してくる」  ボディバッグをテーブル下の荷物入れに入れて立ち上がった賢吾は、肩に何かが触れたような気がして振り返った。 「もしかして……な、菜実なのか?」  柔らかいウェーブのかかった長い黒髪、ウエストの華奢さを強調しているタイトな純白のワンピース、華やかで上品な赤いハイヒール。都会の洗練された空気を身にまとった一人の女性が、ここにいる皆の視線を釘付けにするほどの優美な笑みを浮かべていた。
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