同窓会

5/13

8人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
 ビールがなみなみ注がれたジョッキを両手に持った賢吾は、他クラスの友人と軽く挨拶を交わしたあと元のテーブル席へ戻った。ビールを注いでいた間、四人の笑い声がカウンターまで届いてきた。余程、昔話で盛り上がっているのだろう。 「お待たせ。菜実、ビール持ってきた」 「賢吾、ありがとう。じゃ、再会を祝して乾杯しよっか」  視線を交わしながらジョッキを合わせ、懐かしさに胸を弾ませながらビールを喉に流し込む。口に付いた泡を手の甲で拭い、賢吾は何の話で盛り上がっていたのかを四人に問いかけた。 「ナミがずいぶんとキレイになってビックリしたって話と、今日同窓会に来てない人の話をしてたのよ。ケン、覚えてる? いつも学年一位だったガリ勉のガリ山君、東京で弁護士してるんだってさ」  両手の親指と人差し指を合わせて丸を作り、メガネのポーズをしながら戯けた表情を見せた由貴子。下唇を突き出し眉間に皺が寄っている表情は、“ガリ山”こと狩山にそっくりだ。 「そういえばそんな奴もいたなぁ……俺らアイツにイタズラしまくったし、いつか誰かに訴えられても弁護してくれないかもな? あっはっは」 「康成、笑い事じゃねーよ。ほんとあの頃の俺らは、幼稚でバカだったよなぁ」  呆れたような目で康成を見ながら、シルバーの腕時計を退屈そうに指でなぞっている拓真。筆箱や上履きを隠したり、ノートや机に落書きをしたり――自分たちが犯した過去の行為を思い返していたその時、横に座っている菜実がそっと口火を切った。 「ねぇ。“アゴシ”って覚えてる……?」
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加