同窓会

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 数秒間の沈黙の後、一番先に反応を示したのは由貴子だった。 「やっばー! アゴシって超懐かしいんだけど。同窓会来てないけど今、どこでどうしてるんだろうね?」 「アゴシ……って、ああ!思い出した。あのアゴが長くてブッサイクだった女だろ? いつも一人だったし同窓会に呼ばれてもいないんじゃねぇ? っつーかアゴシっていう名前以外、本名も覚えてねぇや」 「やっばー、私も! アゴシってなんて名前だっけ?」  ケラケラ笑っている由貴子と康成を見ながら、賢吾は“アゴシ”と呼んでいた1人の少女を思い出していた。容姿を揶揄ったり物を隠したり、思い返すと当時はイジメに近いことをしていたと思う。  あの当時、喧嘩ばかりしている両親にムシャクシャしていたせいか、物や人にあたってばかりいた。もう何年も前の事だからすっかり忘れていたが、随分と酷いことをしてきたと我ながら思う。 「康成も由貴子も笑いすぎだ。今ここにいないヤツの話はもういいよ。それより賢吾、久々にナミと再会できて嬉しいんじゃないか? お前、小学校の頃ナミのこと好きだっただろ」  拓真の言葉ではっと我に返り、大きな目を丸くしている菜実を見た。昔から愛らしい顔立ちだったが、小学生の頃の面影が霞むほどの美貌に思わず惹きつけられてしまう。  胸の奥底に眠っていた淡く儚い感情とアルコールの勢いが混ざり合い、賢吾は頭の中で決意を固めるように何度も同じ言葉を繰り返した。 ――菜実と二人きりになるきっかけを作って、携帯電話の連絡先を交換して絶対デートに誘う。
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