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お仕置きが終わり、母代わりの神仕ウルラに抱き上げられ部屋に寝かされた時、クレールはウルラの服の裾を掴んだ。
「ウルラ……神仕長様は私を卑しい出と言ったわ。本当は私がどこから来たのか知っているんじゃ……ないかな。痛っ」
ウルラは服の裾をクレールの手からそっと抜くと、その布地でウルラの唇についた血を拭った。ムチで打たれた時に歯を食いしばり過ぎて唇を切ったのだ。
「クレール。あなたは神仕長様が怖くないの? 私だって恐ろしいのに」
「怖くはないわ。でも大嫌い! だっておかしいもの。特別な存在とか言いながら私達をこき使ってさ。神の使いならもっと大事にすべきじゃない? そんな私にムチを使うなんて神様を冒涜していることになると思うんだけど」
声が大きいわとウルラが焦ったように辺りを見回した。同じ部屋にはアマラしか居なかったが既に石化が進み、最近では寝てる時間が長く、しかも眠りが深いのでたぶん耳には入らないはずだ。
「ムチさえなければ単なる偉そうなおばあさんだもん」
困ったような顔のまま笑みを浮かべるウルラはクレールの背に出来たムチの傷に軟膏を塗りだした。触られると痛むので身体が自然と跳ね上がる。
「ほらぁ、痛いでしょう? 逆らわなければこんな風に痛い思いもしなくて済むのよ?」
傷は確かに痛い。クレールはアマラの苦痛に満ちた寝顔にチラリと視線を向けるとため息をついた。
「痛いうちに入らない。私達が石化する苦痛に比べたらこんなのむず痒いのと差がないし」
石化は激しい痛みを伴う。アマラは時々、塔のてっぺんから飛び降りられたら楽なのにと泣いていた。
母代わりのウルラはキュッと顔に力を入れたあと、クレールを抱き寄せた。
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