ザリオ

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ザリオ

 よく晴れた日、小鳥たちは楽しそうに歌い、青空を飛んでいく。  ラグナスの丘から麓の街までお使いに出るウルラの手伝いでクレールも大きなカゴを携え下り坂をゆっくり下りていくところだった。 「馬を飼ったらいいんじゃないかな? そうしたら荷物を運ぶのも楽なのに」  カゴの中に山ほど入っているラズベリーにうんざりしながらクレールがぼやく。代わりましょうか? と、ウルラが申し出てくれたがクレールは首を横に振った。 「刺繍入りの布も大差ないもの」 「そう? ラズベリーは水っぽいから重いでしょう?」  ウルラのいう事はもっともだし、一年前のクレールならウルラの厚意を素直に受け入れていただろう。でも、今は違う。石化の進みだした指先に力をつけたくて率先して力仕事を引き受けていた。それで石化が止まるわけでもないが、何もしないのは運命に負けた気がして嫌なのだ。 「馬が居れば毎日毎日品物を売りに行く手間が省けるのに! 三日に一回、いいえ五日に一回でも間に合うわ」  自分で荷物を選んだ手前、重いと文句は言えないので、馬がいればどんなにいいかを力説して気を紛らわせていた。 「もしもよ、急病人とか、急に事故に遭われて最期の祈りをささげたい人とかが居たら、直ぐに駆け付けられるでしょ? そうしたら手遅れにだってならないのに!」  カゴを右から左に持ち替えた拍子に最後だけやたら声が大きくなって、ウルラが笑いながらカゴを交換した。 「ああ! 大丈夫だってば」 「少しだけ交換しましょう。ほらあの曲がり角まで」
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