「呪言」

「くっそ……轢き逃げかよ」

恨み言を吐いて、ふと目をやると、ひしゃげてぶっ潰れた自転車が見えた。

「あぁあ、あんなになっちまって。高かったのに、あれ……」

せめて自転車のそばまで行こうとするが指一本すらも動かせなくて、自分がどれだけ深手を負ったのかを思い知らされる。

「マズイ……。俺は、もしかして、死ぬのか……？」

元々あまり車や人通りのない道なこともあって、助けを求めるようなこともできなかった。

「……死ぬのかよ、俺。ほんとに、こんなところで……」

ひどくズキズキと痛む身体で、どうにか車の来ない歩道まで這いずって行こうとしていた俺の耳に、不意に、

「キャーー！」

という叫び声が聞こえた。